自分は本を読むのが好きで、主に技術書や会計・決算関連の本をよく読みます。
以前から「書評とか書きたいなぁ」と思っていたので、今回から紹介したい本に出会ったら、都度「#読書」のカテゴリで投稿していこうと思います。
初回は「矢部謙介」著、『粉飾&黒字倒産を読む』を紹介します。
どんな本か
表題の通りですが、
「粉飾決算と黒字倒産企業の決算書の特徴から、危険な企業をどう見抜くか」
といった点が、本書の大きなテーマになっています。
上記のテーマは主に投資家や、取引先がまともな企業の判断が必要な営業の方に役立つ内容になっています。
一方で「なぜ粉飾決算・黒字倒産が発生したのか」という問題の原因を探るプロセスと、「粉飾決算を行った企業はどうなったのか」、「粉飾決算に頼らず経営再建に成功した企業について」なども述べられています。
こちらのテーマは主に経営者や、会社の方向性を決める財務担当者に役立つ内容になっています。
本書の構成は以下の通りです。
- 財務諸表の異変を見抜く
- キャッシュは嘘をつかない
- なぜ黒字倒産は起こるのか
- 粉飾決算の手口を見抜く
- 粉飾決算の末路
- 経営改革を読み解く
各章について、大雑把に紹介します。
まず第1章「財務諸表の異変を見抜く」についてです
本書のテーマである「粉飾決算や黒字倒産を行った企業の財務諸表に、どんな特徴が出ているか」について述べられています。
この章では有名なF社、M社の事例が取り上げられており、その2社の決算書の「違和感はどこか」について解説がなされています。
第2章「キャッシュは嘘をつかない」ですが、この章では財務諸表の「キャッシュフロー計算書」の重要性について述べられています。
例えば1章で出てきたF社・M社の貸借対照表や損益計算書は、売上が好調のように見えますが、キャッシュフロー計算書を見ると、売上に対して現金が回収できていないため、売上債権や棚卸資産がキャッシュフロー上で積み上がるようになります。
第2章では、こういった決算書に対し「どういった現金収支の特徴を持つ企業が安全か」について解説されています。
また第2章では合わせて、売上債権・棚卸資産・仕入債務の回転効率を計るための「回転期間分析」の手法が解説されています。
基本的に現金収支を粉飾することは難しいため、粉飾決算が行われる際は、主に貸借対照表と損益計算書が改ざんされる傾向にあります。
ただし、キャッシュフローを改ざんされる場合も少なからずケースとしてあるため、そういった場合は売上債権などの回転期間が、異常に長期化していないかを見ると良いそうです。
第3章「なぜ黒字倒産は起こるのか」では、表題の通り「業績が順調なはずなのに、なぜ倒産するのか」について述べられています。
黒字倒産が発生する原因は「資金ショート(債権者にお金を支払えなくなること)」となっています。
ここでは、資金ショートが発生する原因や兆候をキャッシュフロー計算書や貸借対照表から読み取る方法が解説されています。
第4章「粉飾決算の手口を見抜く」では、粉飾決算が「なぜ、どのように発生したか(させたか)」について解説されています。
例えばキャッシュフロー計算書上で粉飾を行うことは基本的に難しいのですが、実際に発生したケースについて、実例を例に述べられています。
ただし、この章からは「監査や内部通報によって不正会計が発覚した」という例が多くなり、財務諸表などから読み取れる特徴が少なくなっています。
そのため、4章以降は経営者や財務担当者向けな内容になっているように思えました。
第5章「粉飾決算の末路」、第6章「経営改革を読み解く」では、経営者や財務担当者など、会社の意思決定をする方々向けな内容となっています。
簡単な説明になりますが、第5章では粉飾決算を発生した・巻き込まれた時、関係者はどうなったか、
粉飾決算を防ぐためにはどうしたら良かったかについて述べられています。
第6章では、一度経営危機に陥った企業が、どうやって回復したかについて、述べられています。
良かったところ
本書について、個人的に「ここが勉強になった」という箇所について書きます。
第1章のF社・M社の事例については、自分の携わった仕事の勉強会で用いられている内容でもあったので、投資家や営業や財務担当者など、幅広い層の実務に役立つと非常に思いました。
また、第2章、第3章のキャッシュフロー計算書の読み方や、回転期間分析の手法は、とても勉強になりました。
今まで財務諸表を読む際は、主に貸借対照表と損益計算書を中心に確認をしていました。
しかし、今回「業績がどうなっているかは、ここ数年間のキャッシュフローの傾向を見ると良い」ということを学んだので、今後の投資判断に使えそうです。
また、本書で紹介されている方法を使って、企業の仕入れたものの回転期間などについても、気にしてみようと思います。
今回は以上となります。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!